1999年7月、私は英国通の旧知に同行してCrop Circleの探訪を果たし、その道中で大英博物館を訪れた。そこで私は書物でしか見た事のなかった円筒印章をじかに見た。第一印象は「思っていたより小さい」という事である。私はそれまで、書物に掲載された、拡大された写真しか見たことがなかった。
 契約行為に欠かせない印鑑は現代にもあるが、この円筒印章は、当時紙の代わりに用いられていた粘土板に署名するために、粘土の上を転がして印とするものだ。私は青森県の郷土博物館で「スタンプ」と思われるキノコ型の土器を見たが、それはまあ我々でも出来そうな造作に見えた。それは直径数センチの円面に渦巻きを刻むだけだから。しかし、シュメールの円筒印章は、指先につまむ程の円筒を平面に転がして立派な絵となるのである。材料は貝殻の太い部分とか硬い石である。それを円筒にし、その表面を彫刻する。転がせば無限に絵が繰り返される。こんなものを誰が思いついたのであろうか。私の粗末な頭では、「立体手な筒の表面に、こう刻めば平面にはこの様な絵柄が展開される」というイメージが描けない。
 さらに、その精緻なのは絵と文字である。長さたった4.6㎝でも「特別に大きな円筒印章」であり、中には1㎝に満たないものもある。つまりその極めて小さな円筒面に絵柄を刻むのは「顕微鏡的な作業」となるのではないか。とにかく粘土に転がされて出来た絵柄は、どんなに大きく拡大しても、バランスのとれた立派な絵になるのである。狭い面積だから手抜きした絵になる、というものではないのだ。
 円筒印章ではないが、平面的な土版にみられる「詩」について、『シュメール文明』の著者ウーリッヒはこう述べている。
 「現代のシュメール学者の一番大事な道具は虫眼鏡であった。古代の書記が切手ほどの大きさの板の上に、どのようにしてその聖歌を芸術的に彫り込んでいったのか、いまだに謎である。」(『シュメール文明』p.40)
清天宮
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